全国7位の総合経済力を誇る蕭山
鉄道で上海を離れることおよそ1時間45分、杭州伊納可模具模型有限公司は風光明媚な観光都市として名高い杭州市の蕭山経済技術開発区に位置する。蕭山は浙江省最大の区であり省政府所在地として浙江省の政治、経済、文化の中心であるだけでなく全国7位の総合経済力を誇る注目エリアだ。蕭山経済技術開発区の設立は1993年、国家レベルの開発区であり現在までにアメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、日本、韓国と台湾、香港など26の国と地域から300社以上が進出、投資総額は28.5億米ドル,契約額は16.4億米ドルを達成した。機械製造、繊維服装を柱産業とし特に日系企業の活躍は目覚しい。
わずかなメリットと山ほどの課題
2004年、日本の景気低迷が叫ばれる中、杭州伊納可模具模型有限公司は株式会社イナック(愛知県岡崎市)の独資法人として蕭山経済技術開発区に設立した。同社は主に自動車部品・家電製品・OA機器・通信機器・パチンコ製品などの試作モデル品製作を得意とし成形品追加工・冶金工具製作まで幅広く手がける。しかし試作モデル品製作分野は量産によるコストパフォーマンスが得にくいため中国進出に二の足を踏む企業が多く、実際中国に進出している日系メーカーはわずか十数社と推測される。当時を振り返り谷口董事長は語る。「冷静に考えて中国進出で得られるのはわずかなメリット。対する課題は山ほどある。でもこのまま日本でライバル企業と横並びの競争をしていていいのか? 10年後、ここにいる若いスタッフ達は仕事に夢を持てるだろうか?」そんな自分自身への問いかけが長年の目標であった中国進出を決意させた。2002年、工場を経営する先輩を頼り杭州へ。そこで生涯の友人となる1人の中国人との出会いが杭州伊納可模具模型有限公司の誕生を導いた。
「中国に来て3人の大親友に巡り合うことができ、彼らからたくさんの感動を与えてもらった。全ては人。人なくして苦労も感動も語れない」。こう谷口董事長は熱く語ってくれた。中国で知り合った人は国籍問わずインパクトがあり一緒にいて精神的に励まされるという。「日本では企業人として役職の壁に隔てられ全く知り合うチャンスがない人にでも中国では日本人同士対個人として付き合える。中国で得た人脈は日本でビジネスをする上でとても大きな影響力がある」。(谷口董事長)実際、昨年NCネットワークの会員企業を紹介したところ帰国した担当者と日本本社で話がまとまり現在はメイン取引先として受注に追われているという。中国で交換した名刺の持つ意味は重い。
感性・情熱・愛情が製品に命を与える
現在中国では試作モデルメーカーが1日1社の勢いで増え、競争もさらに熾烈化しつつある。杭州伊納可模具模型有限公司ではデザインから製品設計・金型製作・半量産品まで一貫してサポートできる体制をとり日系メーカーとして存在感をアピール、早期から中国では珍しく真空成型機を稼動させ、昨年は新たに三次元測定器を導入、品質管理をより強固のものとした。さらに同社では月に1度日本から品質管理担当者が派遣され現場を指導、「日本品質」であることを徹底している。ちょうど今回の取材が滞在期間にあたったため出張者が工場内を所狭し移動しながら現地のスタッフに指導する姿を目にすることができた。設備やシステムは整った。しかし製品に命を与えるのは作り手の感性と情熱そして何よりも製品に対する愛情であると谷口董事長は力説する。
今年中国進出から4年を迎える。日本本社での先月(2007年10月)の売上げは会社設立以来最高を記録した。機は熟した。今後は樹脂のみにとどまらずさらに高度な技術が要求される金属での試作モデル製作に挑戦、より幅広いニーズに対応していく方針だ。また世界中から一流企業が集まる中国華東地区という地の利を活かし将来的にはアメリカやヨーロッパ企業も開拓したいと意気込みを見せる。ここ杭州伊納可模具模型有限公司が世界を視野に入れた戦略工場になる日が待ち遠しい。
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